墓道!!

 朝から大雨、二、三日前からもう雨は仇なのだ、今日は早朝七時から先祖代々の墓へ行く道の草刈日(道打ち)、盆を快く迎えるための儀式なのに、降らなくてもいいときは降る、良く考えてみれば私のつまずき人生そのまま。
 なにしろ墓と云っても山の中腹にある、暗い木々の中で蚊などの大群に襲われながら黙って立っている、わが家の墓なぞは苔むして傾いている、身内の来訪を待っているが、直系の私が行かないのだから機嫌は悪かろう、人間とは、かわいそうの者である、本当に死んだら最低、山奥の寂しいところに持っていかれ大きな石を重しにされ眠るのである、いづれ私もあそこへと思うと、なにやら恐ろしい気がする、これは本気で散骨を考えなければいけない。
 作業の方は朝方はどうにもならないので役員談合の上、午後一時に変更、なんと午後はからりと晴れて絶好の草刈日?今やメンバ〜全員集まっても10人前後、ギャラとなる缶ビール、ジュースなど多量に用意したが余るほうが多い、作業する人々は段々と減り、段々と歳を重ね、もうちょっとで、自分が入る墓への道を綺麗にするのであるから、そりゃ〜力は入るのだが。
 道打ちは年二回の作業である、春の彼岸前、夏は盆前、春はわりあい草も少なく楽であるが、夏の作業は大変何処が道か、何処が草かわからないのである、老人ばかり?の作業であるから時間もかかる、怪我も恐い。
 お金持ちはここの墓所に見切りを付けて他所へ墓を移動して居られるが、なにしろこちとらは生きてゆくのがやっとであるから、死者までは手が廻らないのである、貧乏人は生きている内はともかく死んでも浮かばれないのだ、せめて草でも刈って先祖に手を合わすしかない。